【健康への影響は?】水道水の安全性を東大生が解説します
こんにちは、東大生ブロガーの西片(プロフィール)です
海外の水道水を飲んで体調を崩したなんて話、聞いたことありませんか? 「日本の水道水は大丈夫なの?」と心配になる人も多いと思います
そこで今回は水道水は本当に安全なのか考察していこうと思います
【最終更新:2021年6月26日 公開:2020年11月23日】
水道水が家庭に届くまで
水道水の安全性について考える前に、水道水が家庭に届けられるまでの流れを確認しておこうと思います
まず、水道水のもととなる水をなどの水源から採取します。ここで得られた浄化前の水を「原水」といいます
採取された水(原水)は、大まかに以下の3つのステップで綺麗な水への生まれ変わります
- 土砂の沈殿
- 微細な粒子の濾過
- 塩素による消毒
はじめに、原水を沈砂池と呼ばれる場所にしばらく放置することで、水中に含まれる土砂を沈めて取り除きます。小さめの土砂についてはポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を注入することで沈殿しやすくします
なお、ポリ塩化アルミニウムは処理過程で除去されるため水道水に含まれることはありません(※1)
沈殿で取り除けなかった細かい粒子は濾過によって極限まで除去されます。
最後に塩素(正確には次亜塩素酸ナトリウム)で消毒します。塩素はウイルス・菌に対して有効な他、水中のマンガン、鉄、アンモニアの除去にも効果があります
こうして不純物が除かれた”綺麗”な水が出来上がります
なお、場合によってはオゾンを用いて水中の有機物を分解したり、活性炭でさらに微細な物質を除去したりすることもあるそうです
水道水の水質基準
日本の水道水は、水道法第4条に規定された水質基準を満たすもののみが提供されています(※2)
これは、51の項目から水道水の安全性を調べるもので、大腸菌のような細菌や、水銀・カドミウムといった重金属、後述するトリハロメタンのような有害物質の含有量だけでなく、pH値や色、臭気や濁度など様々な基準をクリアする必要があります
なお、自分が住んでいる地域の水質が知りたいという方は「水道水質データベース」(※3)を参照すると良いでしょう。全国の水道事業者等が実施した検査結果を閲覧することができます
危険性はある?
ひと昔前はイタイイタイ病に代表されるような水質汚染による健康被害が各地で相次いでいましたが、今はどうなのでしょうか
現在、日本の水道水は水道法に定められた規定により厳密に管理されています。さらに定期的に水質基準の見直しが行われていて、水道水の安全性は年々高まっています(※4)
そのため、基本的には「日本の水道水は安全」と言えそうです
ただ、微量ながらも汚染物質が含まれる場合もあります。ここでは主な汚染について紹介していこうと思います
トリハロメタン
日本の水道水は水道法に従ってしっかりと消毒されているため、ウイルスや菌が繁殖しにくい状態になっています。そのため、水道水関連での健康被害は年々減少傾向にあります
しかし、消毒により安全性が担保されている一方で、消毒の際に使われる塩素により発がん性物質・トリハロメタンが発生することが指摘されています。これは塩素が水中の有機物と反応することで生成されるものです
ただ、日本の水道水に含まれる塩素の濃度は、世界保健機関(WHO)が定める基準よりも厳しいため、トリハロメタンによる健康被害はそれほど心配する必要はありません。
それでも気になる方はトリハロメタンを除去するか、ミネラルウォーター等を使用するのが良いでしょう。トリハロメタンは活性炭を用いた浄水器や煮沸等により簡単に取り除くことができます
ただ、5分程度の沸騰ではトリハロメタンの濃度を上げてしまい逆効果になるので、十分な時間をかけて沸騰させる必要があります(※5)
水道設備の欠陥による汚染
水道局から供給された水が安全でも、水道管や給水器が破損していたり錆びていたりする場合には、安全性が損なわれる場合があります
特に水道水が濁っている、赤っぽい、臭い、といった場合には、水道設備の欠陥が原因である可能性が高いです
消毒に強い微生物
先ほど「しっかりと消毒されているため、ウイルスや菌が繁殖しにくい状態になっています」と述べましたが、中には塩素消毒に強い微生物もいます
また、微生物の進化のスピードは速いので、今後塩素が効かない微生物が増えないとは言い切れません
安全な水を使用するには?
日本の水道水は行政によって厳しく管理されており、安全性が極めて高いということが分かっていただけと思うます。トリハロメタン等の不純物が含まれる場合もありますが、微量なので健康に対する影響は大きくはありません
しかし、中には「極限まで不純物を除いた安全な水を使いたい」という方もいらっしゃると思います
そういう方は、ミネラルウォーターやウォーターサーバーの水を使ったり、自宅の浄水器で浄化するのが良いでしょう。ただ、全ての水道水を置き換えるのは、手間もお金もかかるのでお勧めできません
調理用や飲料用など人体に直接関わる用途や動植物に与える場合には清潔な水を使い、掃除や入浴等に使う生活用水は水道水を使うというように使い分けるのが良いと思います
「トリハロメタン」に関する豆知識
トリハロメタンとは特定の物質を指す用語ではなく、メタン中の水素原子のうち3つがハロゲン(フッ素や塩素、臭素などの17族元素)と入れ替わったものの総称です。
そのうち、クロロホルム(CHCl3)、ブロモジクロロメタン(CHBrCl2)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、ブロモホルム(CHBr3)、これら4物質の合計量について水道水質基準で規定されています(※6)。
なお、トリハロメタンの「トリ(=tri)」は「3」を表す接頭辞で、トリオ(trio)、トライアングル(triangle)等の単語に見られます
参考文献・画像等の出典
※1 千葉県 水のQ&A『その3「水道水」をつくる過程でどのような薬品を使っているの?』:
https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/qa/qa03.html
※2 厚生労働省『水質基準項目と基準値』:
※3 水道水質データベース:
※4 厚生労働省「水道水質基準について」:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/index.html
※5 三重県『知っておくと便利な水道まめ知識』:
※6 千葉県 水のQ&A『その17トリハロメタンが心配なんだけど・・・?(パート1)』:
https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/qa/qa17.html
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