うなぎの血には毒がある?食べても大丈夫な理由【イクチオヘモトキシン・刺身】
ヤゴコロ研究所に訪問いただきありがとうございます。東大生ブロガーの西片(@nskt_yagokoro)です
突然ですが皆さん、ウナギはお好きでしょうか?ウナギ料理といえば蒲焼かと思いますが、ふわふわとした食感とジューシーさが堪らないですよね
そんな日本人が大好きな「ウナギ」ですが、実はウナギの血には毒が含まれているって知っていますか?
今回は『簡単解説!科学雑学』第4弾として「ウナギの毒」について解説していこうと思います
※理系向け記事はこちら→『西片と学ぶ身近な科学』
【最終更新:2021年2月10日 公開:2021年1月23日】
ウナギの血に含まれる毒とは
ウナギの血には『イクチオヘモトキシン(ichthyohemotoxin)』と呼ばれる神経毒が含まれています
ichthyoは魚、hemoは血、toxinは毒という意味があり、日本語に訳すと『魚類血清毒』になります(hemoは赤血球に含まれる「ヘモグロビン」のヘモと一緒です)
ただ、イクチオヘモトキシンという名称は特定の化学物質を指す名称ではなく、あくまでウナギやアナゴ、ハモ、ウツボといったウナギ目の魚類が持つ神経毒の通称。
ウナギの血液に含まれる毒には固有の名称はなく、明確な化学構造も明らかになっていないようです
なお正確な毒性は不明ですが、ウナギの血を大量に摂取した場合、下痢、嘔吐、呼吸困難などの症状が現れ、最悪の場合死に至ると言われています
なんで毒があるのに食べられるの?
ウナギに毒があると言いましたが、皆さん体調を崩すことなく美味しく食べてますよね?
事実、日本でウナギの血液による食中毒の被害は報告されていません(参考:厚労省)
なんで毒があるはずなのに食べても平気なのでしょうか
それは「調理時の加熱により毒性を失うから」
イクチオヘモトキシンはタンパク質の一種。
タンパク質は熱に弱いので加熱により形が崩れます(これを「タンパク質の変性」といいます)
ウナギの血に含まれるイクチオヘモトキシンの場合、60℃で5分加熱しただけで完全に毒性を失うので、ウナギの蒲焼を食べても何の問題もないのです
逆に言えば加熱しないと危ないため、ウナギを刺身として食べることは一般的ではないわけです
なお、熟練の職人さんが丁寧に血抜きした「ウナギの刺身」も一応存在しています
僕は食べたことがないので詳しいことは分かりませんが、コリコリしていてフグ刺しに近い食感なんだそうです(↓興味ある方は見てみてください)
ちなみに、先程「ウナギの血を飲むと最悪の場合死に至る」と説明しましたが、厚労省のサイトによると体重60kgの人の致死量はおよそ1000mlと見積もられるとのこと
こんなに大量のウナギの血を誤って飲むことは普通ないと思うので、安心してもらっていいと思います(ふざけて飲むのはやめましょう)
調理時の注意点
フグなど他の有毒な魚と違い、ウナギの場合は調理師免許はいらないため一般人でも調理可能です。
ただ、加熱前のウナギの血は有毒なので、十分に注意して調理する必要があります
厚労省のサイトによると「血清が目や口に入ると激しい灼熱感や粘膜の発赤が、傷口に入ると、炎症、化膿、浮腫などが引き起こされる」とのこと
もしご自身でウナギを調理する場合にはゴム手袋をするなど対策するようにしましょう
そもそも一般的なウナギの調理法である鰻の蒲焼は「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」などと言われることから分かるように非常に難しいもの
素人が危険を冒して調理しても上手く調理するのは困難なので、プロの料理人に頼むのが一番かと思います
まとめ
今回はウナギの毒について解説しました
- ウナギの血に含まれる毒は「イクチオヘモトキシン」と呼ばれる
- 加熱することで無毒化するため、鰻の蒲焼は食べても問題ない
- 血が目や口、傷口に入ると危険なので調理の際は十分注意する必要がある
フグなど他の有毒生物も機会があれば取り上げたいと思います
以上、東大生ブロガーの西片でした!
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参考文献
厚生労働省『自然毒のリスクプロファイル』: