【進振り】現役東大生が東京大学の進学選択制度の仕組みを徹底解説
ヤゴコロ研究所に訪問いただきありがとうございます。現役東大生の西片(@nskt_yagokoro)です
今回は東京大学の進学選択制度(通称:進振り)について詳しく解説していこうと思います
※この記事は数年前に書いたものです。古い情報ですので参考までにご覧ください
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進学選択制度とは?
進学選択制度とは東大の1、2年生が所属する前期教養学部の成績をもとに3、4年次の進学先を決めることができる制度のことです。前身である「進学振り分け制度」が「進振り」と呼ばれていたため、現在の進学選択制度もその名残で進振りと呼ばれています。
東大の教育課程は前期課程と後期課程に分かれています。前期課程ではリベラルアーツ教育が目標として掲げられており、特定の分野に偏ることなく教育が受けられるようになっています。そのため理系生徒が文学や政治を学んだり、文系の生徒が数学や物理の講義を受けたりすることが可能です。
そして、前期課程修了時に、後期課程でどの専門分野について学ぶか決めることになるのですが、学部学科ごとに定員があるため、人気のある学部では志望者を振り分けることになります。その際に登場するのが進学選択制度です。
行きたい学部があっても前期課程の点数(進振り点)が低いと志望学部には行けない可能性があります。前期教養学部での成績がその後の大学生活を大きく左右するのです。そのため東大生は志望学部に確実に行くべく、大学合格後も熾烈な戦いを繰り広げることとなります(?)
進振り参加条件と前期課程修了条件
2年次に実施される進学選択が可能になるためには1年のS1タームから2年のS2ターム(8月終わり頃)まで在学した上で、2年のS2ターム修了時までに定められた単位数を取得する必要があります。推薦入試合格者や外国人留学生など進学先があらかじめ決まっている人も例外ではありません。仕組みがやや複雑なので分からない時は教務課で相談するといいと思います。なお、詳しい単位数については、履修の手引きの「進学選択が可能になる条件と前期課程修了要件」の頁をご覧ください。
「単位落とす奴なんてまずいないでしょ」と思う人もいるかもしれません。しかし履修した全ての単位を取得すること(いわゆるフル単)は意外にも難しいのです。しっかり勉強していても単位を落とす人はざらにいます。担当教員にもよると思いますが、他大学で仮面浪人していた友人数名に聞いたところ、東大は特に単位や高い点数を取るのが難しいとのことでした。優秀な学生が全国から集まっているため仕方のないことかもしれませんが…
さらに前期課程を修了し後期課程に進学するためには、上記で述べたもの以外の単位も取得しなければなりません。こちらも仕組みが複雑なので教務課や先輩に相談するといいと思います。
進振りの仕組み
受入保留アルゴリズム
2018年度からは「受入保留アルゴリズム」という新方式がとられるようになりました
この受入保留アルゴリズムでは、志望順位に関わらず成績の良い人が優先的に学部に進学できます。
例えば平均点80点のAさんが薬学部薬学科を第3志望で、平均点70点のBさんが同じ薬学科を第1志望で登録していた場合、Bさんより点数の高いAさんの方が薬学科に行きやすくなります(Aさんが第1,2志望に行けなかった場合)。つまり進振りでは基本的に成績が全てなのです。
段階
進振りには第一段階、第二段階、第三段階があります。第一段階で全体の定数の約7割が、第二段階で残りの約3割が内定します。第三段階では余った進学枠を、時には成績以外の評価基準を用いて奪い合うことになります。なお、中には定員割れしているにも関わらず第三段階募集をしない学部学科もあります。
第一段階で登録できる志望学科は1つのみで面接や志望理由書の提出は基本的に必要ありません。第一段階で定員が充足されなかった場合、不足分は基本的に第二段階の指定科類枠に加えられます。
一方、第二段階、第三段階では複数の学部・学科を志望できますが一部の学部・学科では面接や志望理由書が課される場合があります。(面接を行う学部・学科は少ないですが医学部では面接を重視するとのことです)
なお、第二段階では志望する全ての学部学科を上限なしで書くことができるのに対し、第三段階では第1志望から第3志望それぞれで単願、または志望学部内で複数の進学単位がある場合は複願で登録することになります。
2020年度進学選択のスケジュールについては以下の記事をご覧ください
平均点算出
進振りにおける成績評価は、基本的には以下の式で算出される「基本平均点」を使います。ただし「指定平均点」と呼ばれる特殊な算出方法を用いる学科もあるので履修の手引きやUTESで確認しておくといいでしょう。特に工学部は全学科で指定平均点を用いるので注意が必要です。
$$\small基本平均点=\frac{各科目の(評点\times単位数\times重率)の総計}{各科目の(単位数\times重率)の総計}$$
さらに一部の学部では履修点を考慮する場合もあります。履修点とは学部が指定した講義を履修することで平均点にプラスされる点数のことです。詳しい加点方法については履修の手引き『重率・履修点』を参照してください
自分で平均点を算出したいという方はコチラのサイトを利用することをオススメします。重率や指定平均点を考慮した点数計算を自動で行ってくれるため非常に便利です。
要求科目と要望科目
学部学科によっては「要求科目」を定めている場合があります。
要求科目とは学部学科を志望するために必要な科目のことで、2年のS1タームまでに指定された要求科目の単位を取得しなければ、その学部学科を志望することができない、という決まりになっています。
実はこの制度、理系科類の生徒にはほとんど関係ありません。というのも要求科目は理系学部が文科生に課すものだからです。
つまり理科生は進振りに必要な単位を取得し十分な点数を取れば難なく(?)文転できます。逆に文科生が理転を希望する場合には、志望学部で課されている要求科目はないか早めに確認して履修登録する必要があります。
一方で要望科目というものも存在します。こちらは進振りとは大して関係なく、履修していなくてもその学部学科を志望することはできるが、履修しておくと後々役に立つ科目です
進振りのメリット
生徒のモチベを保つ
進振りがあるおかげで東大生の多くは大学合格後も熱心に勉強します。中には受験勉強よりも勉強量が増えたという人もいます。これは他大学と東大の最大の違いと言えるでしょう。
大学入学後に学部学科を決められる
大学入学後に学部・学科を選べるにも大きな利点です。高校時点で将来やりたいことについて具体的に決まっているという人は少ないと思います。そもそもどの学部学科でどんなことを学ぶか把握している高校生はそういないでしょう。
その点、東大では実際に大学の講義を受けたり教授の話を聞いたりした上で進路を決められるので、進学後に後悔するということは比較的少ないと思います。
進振りのデメリット
公平性の欠如
進振りの良くない点として、やや公平性に欠けることが挙げられます。
大学入試の場合、理科、社会の選択科目はあるものの基本的に全ての受験生が同じ問題を解きます。さらに東大入試では問題ごとに採点担当者が決まっている(らしい)ため、採点に際しても公平性が保たれています。
一方、進振りでは英語一列や情報など一部教科を除いて担当教員ごとに試験の問題が異なりますし、それに伴い採点基準も違います。そのため学力の高い生徒が試験で高い点数を取ったはずにも関わらず成績が悪いということがたまにあります(もちろん逆のパターンもあります)。
また、優3割規定や授業態度、出席回数やレポートの提出点など様々な要因が絡んでくるので、試験のみが得意な生徒には進振りは厳しいかもしれません。
点数or興味
東大前期課程では選択科目として好きな講義を選んで履修することができます。
しかし誰もが興味のある講義を取るわけではありません。
その講義を担当する教員が成績を低くつける教員だった場合、進振りで不利になる恐れがあるからです。進振りで失敗して好きな学部に行けなくなっては元も子もありません。
そのため、逆評定などで高得点が取りやすい授業はどれかを調べて、楽に点数が取れる講義(いわゆる楽単)を履修する生徒が結構います。せっかくのリベラルアーツが台無しになってしまっている気がします。
リベラルアーツが裏目に?
進振りでは必修科目の点数が成績に大きく関わってきます。そのため将来必要のなさそうな科目にも時間を割いて勉強しなければいけません。
例えば理科生が、理系教科や英語の成績は良いのにも関わらず、今後使いそうにない第二外国語や選択科目の成績が悪かったために、志望学部に行けなかったという話はよく聞きます
専門外の教科の単位が取れなかったために進振りに参加できない、もしくは進振りで不利になる(いわゆる進不利)というのは悲しいですよね
リベラルアーツを掲げる東大としては、幅広い知識を身につけてほしいと思っているのかもしれませんが、学生にとってはかなりの重荷です。
終わりに
今回は進振りについて説明しました
進振りは多くの東大生にとって避けられないことなので、しっかり情報収集した上で志望学部学科を目指しましょう
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以上、現役東大生の西片(@nskt_yagokoro)でした
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